編集後記


臨床評価 2001; 28(2): 377より

筆者が医者になったのは1945年、日本が負けた年であった。医局で先輩からあの薬が効くと言われても、根拠がはっきりしなかった。 教授にあれを使ってみよと言われて使ってみても効いたかどうかはっきりしなかった。内科では粉薬を何種類も混ぜて患者にあたえ ていた。あんな面倒な事の必要があるのかと疑った。1970年頃、私の高等学校の同級生が厚生省事務次官になって、新薬調査会の お手伝いをするようになった。二重盲検比較試験は有力な方法であった。薬効が客観的に証明できることを納得した。コントローラー 委員会で日本の比較試験の多くを手がけた時代があった。

時代が進んで、いろいろな理由で日本ではいまや比較試験が大変難しくなった。ICHが進んで、できるだけ外国の結果を使って厚生労働省の 承認をとろうというのが現状である。この号に載っている解説はわが国で臨床試験を適切に行うための仕掛けの解説である。SMO,CRO, CRC,IRBなどの解説に大変力作が揃って読者の役に立つであろうと期待している。

唯、忘れてならないのは、医療の現場との結び付きである。この点で日本医師会などの日常診療に当っておられる方々のご意向が大変 重要であろう。最近読んだ次のEDITORIALは大変参考になると思う。"日常臨床の一例一例が研究であり、正しい診断と最適な治療、 その評価を怠ることはできない。臨床試験もこのような前提で始めて信頼できる結果が得られる。一般の人々は臨床試験によって医療の 質が向上し、福祉に貢献できることを理解すべきである。"と述べている (It's official: evaluative research must become part of routine care in the NHS. Journal of the Royal Society of Medicine 2000; 93 (11, November): 555)。英国のNHSを日本の保険医療に置き換えれば、日本にもそのまま当てはまる。ご一読をお勧めする。(中島 章)

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