臨床評価 1980; 8(1): 303より
臨床評価8巻1号をお手許にお届けします。どうせ3号雑誌だろうという当初の杞憂をよそに、とにかく8年目に入ることができ、一応堅実な 歩みを続けていると評価してよいようです。編集者のひとりとして、今後とも皆様の一層の御愛顧をお願いするものであります。
雑誌は毎年3冊出ております。学術雑誌としての体裁もあり、また郵送料の関係もありで、定期刊行物(年4冊)の体裁をととのえたいと 思っております。しかしなかなか展望論文を得るのが困難で、それがlimiting factorとなって発行冊数を減らしているようです。幸い本号は 中島先生の展望を巻頭にかざることができましたけれど・・・・・。
私はこの雑誌の発行は田舎のバスであってよいと思っているのです。乗客がたてこんでくればバスを出しますし、場合によってはつめこみ・ 見切発車・欠便・増発どのようなこともやれます。国の仕事、早く知らせなければならない副作用情報などの場合には、ときにお客の積みかえも 許していただきます。私どもの雑誌は素人ばかりでやっておりますし、月1回の編集会議のとき以外は謝金を受けとらぬことにしておりますので、 その辺はわがままを振舞っております。正直にいって、遊びの一面もありますので、自由度とflexibilityをこそ大事にしたいのです。
それは同時に自己規制の厳しさも伴うわけで、実は私が本号に書きました論文(p. 79-110)も、某々事務局員らによる峻烈な批判と度重なる 手直しののちに、やっと陽の目を見たものなのであります。自分ではデータに沿って慎重に論文を書き、共同執筆者とコントローラーの検閲を 経ましたので、全く問題あるまいと思っていたわけですが、考察がメーカー寄りだというのです。実際にはきわめてirregularな現象がおこっていたのを 苦心して何とか牽強付会して、論文にまとめたものなのですが、無理を見破られてしまったわけです。激論の末、直しました。やはりコントローラー 委のoutputを自分ひとりで黙想・作表し論文を書いたのでなく、考察のためにメーカーの作成した補助的な図表に従って、割合easyに筆を 走らせたのがいけなかったようです。さらに激論。そしてふたたび地を這うような作表の繰り返しと考察のやり直し。他の人ならまだしも、他人の 論文にケチ(?)をつける役目の人間が、ユルイ(?)論文を書いてはしめしがつかない。将来そのレベルの論文を拒否できなくなるというわけ です。曲げて納得。やっとパス。泣きました。
その他の論文もみな厳しい検閲を経たもののはずです。最近negative report、副作用論文が少ないので、皆様の投稿をのぞみます。
また、本誌には創刊号以来全く広告をのせたことがありません。私は批評させるなら広告をのせてもよいと思っているのですが、「そんな提案は おかしい」と却下されました。広告がないのが本誌の広告だから、無理にかせがなくてもいいやと思っております。
というような論議を続けつつ、本誌はどうやら号を重ねつつあるようです。(栗原雅直)