臨床評価 1977; 5(1): 173より
200カイリの漁業専管水域問題で日ソ交渉が続いている。そもそもは美しく豊かな国土に恵まれたわれわれなのに、その資源以上に人口を 増加させた結果、戦後も資源と市場という「青い鳥」を求めて苦しむ。しかし残された道は工夫と努力と国際協調しかない。
少ない資源ですむ精密化学は日本にとって戦略的にも重要な部門であるといわれるのに、自動車や電気製品に比べて医薬品輸出は生産の 3%台であり、主要な24ヵ国のうち、医薬品出超国である西独、米、英、スイス、仏、伊、オランダ、デンマークに次ぐどころか、入超国の方の 第1位だとのことである(1970年度、国連資料)。
しかし日本は高い合成技術と多種・少量生産の面ではすぐれていると言われ、ここで良い薬が創り出されるならば、そのハードウェアに、前臨床、 臨床分野の評価、使い方というソフトウェアが公平、正確に加えられさせすれば、各国も高く買ってくれるはずである。
そこで本号では亀山論文が基礎医学におけるデータの正確、公平性の維持について重要な意見が出され、資料論には基礎医学部門を信頼性 あるものにするためのGLP提案が宮野晴雄氏の努力で訳出されている。また臨床部門ではネガティヴデータである北沢論文が学問的価値と、 今後のこの方面への薬を考える者にとって貴重なデータを公表しており、伊藤論文は精神科領域における医薬品開発の米国のガイドラインを 紹介、訳出して下さっている。(佐藤倚男)