編集後記


臨床評価 1976; 4(2): 319より

サリドマイド事件以来くすりの副作用の問題は、社会の重大な関心事の1つとなり、しばしば新聞紙上を賑わしているにもかかわらず、なお 十分な対策が立てられておらず、多くの医師は次々と出現する新薬について十分な知識を得る暇もないままに日常診療を行っている現状 である。今日の疾患のうちいわゆる医原病がかなりの率を占めているといわれているが、そのうちの大部分は、多くの医師が意識しているか否か にかかわらず、くすりの副作用によるものと思われる。現今のごとく進歩のいちじるしい医療社会にあって、すべての新知識に精通して医療を 行うことは、多忙な第一線医師のみならず、大学人といえども不可能なことであろう。

一方、くすりの副作用のあるものは、個々の診療単位では副作用として認知されないで見逃がされており、個々のデータを集めて分析して 初めて副作用として気付かれるものも少なくない。これはあながち医師の無能や不注意にのみよるものではなく、医療ないし医学に固有の 宿命的な現象であると思われる。かかる現状で、副作用情報のシステム化や集中モニター制に各国が関心をもち、一部の国ではすでに実際に 試みられていることは、今日の医療の当然の姿であると思われる。

わが国においても多少遅ればせながら、その具体策が検討され、実行されようとしている。本誌ではまず、佐藤倚男東大助教授に、副作用情報 システム化の問題点、わが国における現状、主として米国における活動状況などを紹介してもらった。しかし、いかに立派なシステムやモニター 制ができても、それを運営するのは人である。本総説でもちょっと述べられているが、わが国の現状は、残念ながら、このシステム以前の問題 でなお解決すべきものが少なくないように思われる。

本誌ではさらに資料として”blue sheet”の全訳を掲載した。今日大きな社会問題となっている新薬開発時の人権問題に関連した貴重な資料で あり、この翻訳に当って中心となって努力された栗原、光石両編集委員に対して感謝するものである。(C. N.)

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