編集後記


臨床評価 1975; 3(2): 277より

世の中には、薬は効かないものと、頭からきめてかかっている人もあるが、大部分の人たちは、薬の効果を”信じ”ている。しかし、ほんとうに 薬がきくのかどうか、それを確かめることは容易ではない。

本誌への投稿論文を読んで、気がつくことが若干ある。もっとも初歩的な誤まりとしては、改善と有効とを混同していることである。たとえば、ある 薬剤Aを、あるグループの対象患者に投与する。同時に同じ疾患の別なグループにはplacebo(P)が投与されている(二重盲検)。ある種の 症状が、Aでは60%に、Pでは40%に軽快したとする。そこで、Aの有効率は60%、Pの有効率は40%というように表現される。しかし、ここに 出てきた数字は、改善率ではあっても、有効率ではない。これだけの数字では、Aが有効であるとは断定されない筈である。

つぎに気がつくことは、わずかな差を過大に評価する傾向がみられることである。少なくとも原因療法でない限り、ある疾患の、すべての症状 に効く薬というのは、考えられない。ある症状には効いても、他の症状はかえって悪化することもある。それらの綜合判定が、臨床家の責務 なのである。

あらゆるデータを、薬剤側に不利にとってしかもなお、有用であることの証明が重要なのである。

副作用に関しても、たとえば調査期間が4週間であったとすれば、”少なくとも4週間の観察では、副作用は認められなかった”とか、 ”しかじかであった”と、必ずシバリを入れておく必要がある。

事実にもとづいて客観的に記載する――このことは、わかりきったことのようであるが意外にむずかしい。また、勇気を必要とすることでもある。 (亀山正邦)

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