臨床評価 1975; 3(1): 123より
医学会の各分科会もほぼ終り、例年ならば新年度の計画に着手し夏を迎える時期であるが、医薬品をめぐる諸般の情勢は日々その厳しさを 増している現状である。
臨床薬理学はようやく多くの医家の関心を呼ぶ段階に入っては来たものの、その領域があまりにも広く、またその問題点が多く且つ深遠である ために、わが国で定着するには、さらに長期間を要するものと思われる。実験動物を用いた前臨床段階の成績から医薬品の価値というものを 考えるとき、ヒトと動物の間には類推が許されない障壁があまりにも大きすぎるため、各専門分野や学際領野の医家の協力によって一日でも 早く、医薬品の総合評価システムの樹立が望まれるところである。
昨年から、総説欄で各種医薬品の現時点での評価と問題点が、倫理的面からの規制の動向をふくめて検討紹介されているが、将来における 疑問点解決のいとぐちを示唆して行くという当初の目的にそって定着して来たことを示すものであろう。
本号にはじめて薬効評価システムの解説が載ることになったが、将来は方法論なども採り上げられることを希望する。(大森義仁)