臨床評価 1974; 2(3): 472より
1974年も余すところ旬日となり、本号が上梓される頃は年が改まっているはずである。行く年を振りかえってみると、内外共に多事多難であったが、 ”くすり”に関しても風波が絶えぬ年であった。大腿四頭筋拘縮症の多発が問題になったが、年の瀬も迫った頃、経口血糖降下剤の問題が にわかに大きく報道された。”くすり”が話題に上る時は、きまってそのnegativeな面や暗い面に関してであるのは、”くすり”という両刃の剣がもつ 宿命ではあろうが、なんともやりきれぬ思いである。銘刀を振るうにはそれだけの技量を必要とするが、その器量のない者が多い場合は銘刀を 世に出すべきでないということになるのであろうか。刀が悪いのか、使う者が悪いのか、はたまた売る者が悪いのか、問題はいつも複雑であるが、 くすりに関する進歩や改善にはいつも犠牲を伴うということは悲劇的である。
さて本誌もこれで通算6号となった。文芸の同人雑誌であれば、その性格、カラー、主張、スタイルなどが定着する頃であるが、わが「臨床評価」 に対する評価もそろそろ定着する頃であろうか。本誌の存在意義や目標が何かということは、掲載論文のitemや内容にもっとも具体的に 表れるはずである。本来、きわめて専門的な内容の雑誌ではあるが、臨床試験を実際に担当する一般の医師にも参考になるように、評価の 原理や方法論に関する解説的・啓蒙的な論文をさらに増やすことも必要であろう。
本号にも重要な総説や臨床治験報告の力作が揃っているが、スタイルやレイアウトにどこかまだ”固苦しさ”があるように感じられる。今後は、 おいおいにこういう点も改善して行きたいものである。(山本皓一)