編集後記


臨床評価 1974; 2(2): 323より

狂乱物価、金権政治、日韓問題、などと連日新聞紙上をうずめる深刻なニュースが伝えられている。いろいろな事件を通じて私どもに改めて 日本人の精神構造の根底を盤居する「甘え」の根性がすべての問題解決に影響を及ぼしているように思えて気になってならない。政治的・ 社会的な問題の処理に当っては”高度の政治的配慮”とか”腹芸”とか”パイプライン”などの存在が、不愉快でも存在することが致し方ない と思うこともあろうが、科学技術の領域にあってはこの「甘え」は許されない。

最近医薬品再評価の結果が公示されつつあるが、医学・薬学の領域の急速な進歩が自らもたらした結果であるとみられるものの、一歩 突込んで考えると過去の医薬品製造販売許可申請に先立つ臨床家の、安全性、評価の妥当性、信頼性、試験の公平性維持などに対する 態度、姿勢に問題がなかったかを考えざるを得ない。そしてこの懸念に現在および将来へと後を引くことがないだろうかというところまで含ん でいる。

このような問題解決の一助とも考えられて刊行された本誌も、号を重ねるにつれ同人雑誌的な編集、印刷技術の未熟を克服して多少の向上 (?)をみているといえまいか。

今回は薬効評価の総説と、薬効懇の答申書にも必要性の強調されていた、第一相試験のモデルともいうべき論文とを掲載できたことは 喜ばしい。(伊藤 斉)

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