編集後記


臨床評価 1974; 2(1): 129より

中近東戦争に端を発した石油騒動が、否応なくわれわれの生活に陰を落としている。改めて日本の立つ基盤の脆さを感じているのは 筆者だけではあるまい。こういうふうに見直してみると、われわれのまわりにはなんとショー・ウインドー的要素の多いことか。表がわの 華かさにくらべて、一歩裏通りに足を踏み入れたときにみられる貧しさが、実感として迫ってくる。Show window shoppingという言葉がある。 実際には、なんの買いものをするのでもないけれど、Show windowをのぞき歩いて、想像上の買いものを楽しむ一種の白昼夢である。 白昼夢をみながら、隙間風の入る文化アパートで満足している人のなんと多いことか。

国の薬事行政という大問題に対して、身近かにできることからと、はじめた本誌の刊行が、予期に反して(?)長続きしている。このような やり方は身を修め、家を斉め、国を治める、式の方法で、まだるっこいことは確かである。裏通りのドブ掃除的発想に近いのかも知れない。 しかし”みせもの”にはない行動する強みがある。drop outではなくて、drop intoとでもいうべきであろうか。同人雑誌的性格が、投稿規定 という形式によって堅苦しくなった感がなきにしもあらずである。Yシャツに、作業服で裏通りにいた人種が、上着とネクタイをつけて表通り に顔を出したようなものであるが、これによって、われわれの精神構造は何の変質もない。(清水直容)

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