4.4つのレベルの薬籠
日本で使われる薬の数と承認の考え方―新薬承認と保険適用―
Number of drugs in Japan from the administrative standpoint of new drug approval and medical reimbursement

久保田晴久
(財)医療機器センター

〔臨床評価(Clinical Evaluation ) 2001; 28(3): 505-11より〕


Abstract
  Stricter standards for new drug approval, such as test guidelines resulting from ICH activities, and aggressive post-marketing surveillance, including drug reexamination, drug reevaluation, and drug monitoring for adverse drug reactions, have led to the disapproval of a number of drugs with low safety and effectiveness.
  There are now some schemes aimed at encouraging pharmaceutical manufacturers to develop innovative drugs while others tend to restrict the use of drug, such as fixed-amount payment systems and increased individual burden under current medical reimbursement. These restrictions will be strengthened in the near future.
  Future discussions on new medical reimbursement should consider issues, not only from the financial standpoint, but rather from the national health standpoint.

Key words
new drug approval, medical reimbursement, standards for drug approval, drug tariff



 はじめに


 わが国の薬事行政において「薬を選ぶ」という作業はどのような基準に基づいて行われているのであろうか.わが国には約3,000成分,17,000品目 の医療用医薬品が存在しているが,これらはどのように評価・承認され,市場に流通し,医療機関によって「選択」されているのであろうか.筆者は, 医薬品の承認審査や薬価制度に携わってきた経験があるが,現在は(財)医療機器センターで医療機器の審査に従事している.医薬品の有効性 と安全性を確保する薬務行政の立場,および医療保険行政の立場,という2つの側面から,わが国における薬の選定について論じてみたい.


 1. 承認・市販後調査の観点


 1) 現在の承認審査・市販後調査体制


 本題に入る前に,厚生省における承認審査や市販後調査を行う部門の組織体制について簡単に述べる.現在の組織体制は3機関に跨っており, 平成9年7月以降に内部審査の充実を企図して3ヵ年計画で審査担当官の大幅増員を図って再構成されたものである.具体的には,@厚生本省 医薬安全局の審査管理課と安全対策課 A厚生省の付属試験研究機関に属する医薬品医療機器審査センター B医薬品副作用被害救済・ 研究振興調査機構(医薬品機構または機構),以上の3機関でこれらの業務を行っている.承認審査関係では,審査管理課が各種の承認基準の 作成や中央薬事審議会の審議を含めた承認の手続きなど,審査センターは新薬の審査,医薬品機構は新薬のデータの信頼性調査やGLP, GCPの実地調査のほか後発品の実質的審査である同一性調査を行っている.

 2) 新薬承認および治験件数

 では,年間どのくらいの新薬が承認され,新薬の承認を得るための治験が行われているのだろうか.新薬といっても効能拡大や新投与経路 といった新薬もあるがここでは新有効成分を含む医薬品ということで述べる.Table 1に示すようにほぼ年間20から40成分の新たな有効成分 数が承認されている.治験届には,フェーズが変わる際に提出する治験届もあるが,ここで示すのは新有効成分を含有する医薬品について 国内で始めて治験をする場合の初回治験届についての数字である.1996年頃から新有効成分の承認数,治験届出ともその件数が減少している. これは,ゾロ新算定の導入,保険医療における治験費用の負担を定めた治験に関する特定療養費の導入,新GCPの実施,ICH臨床試験 ガイドラインの導入などの要因が重なったものと考えられる.

Table 1 Number of new drug approvals (NDA) and entries of trials for NDA of each year
年 次 新有効成分数 合 計 年 次 新有効成分初回届け
製造 輸入 1987(S62) 131
1988 20 26 45* 1988 132
1989(H1) 12 17 29 1989(H1) 124
1990 17 18 33* 1990 138
1991 21 15 35* 1991 124
1992 19 13 32 1992 129
1993(H5) 22 18 40 1993(H5) 160
1994 25 20 45 1994 115
1995 12 14 25* 1995 104
1996 8 16 24 1996 95
1997 5 10 15 1997 71
1998(H10) 8 14 21* 1998(H10) 54
1999 12 28 39* 1999 52
*印は製造と輸入で同一成分が重複していることを示す。

 また同時に,国内製造承認は減少しているが輸入承認は減少していないという傾向があるが,これはICH臨床試験ガイドラインのうち ブリッジング・スタディによる外国臨床試験データの使用についての規制が緩和され,すでに外国で市販している医薬品の承認申請が以前よりは 容易になったことが影響していると考えられる.

 3) 承認基準の厳格化・国際化

 現在の薬事行政の基本方針が1967年(昭和42年)にサリドマイド禍の反省を契機に制定されて以降,幾度かの節目を経て,現在の審査基準 となってきている.最近の承認審査の方向性としてはグローバル化,透明化ということになるだろうが,結果的には従来の承認審査基準の ハードルを高くしている.

 グローバル化,国際化についてはICHガイドラインの導入が大きな流れを作っている.ICHとは日米欧3極の医薬品行政担当者と医薬品業界が 医薬品審査基準などについて国際調和を図るため協議する場であり,その成果は統一ガイドラインとして3極で使用されている.品質,安全性, 有効性および複合テーマの4分野で専門家会合が開かれ,2年ごとに全体会合を開き統一ガイドラインの承認等を行っている.第1回全体会議は 1991年にブルッセルで開かれ,最近では2000年11月に第5回全体会議がサンディエゴで開かれた.現在までに品質分野では7トピック,安全性 では7トピック,有効性では12トピック,また複合テーマでは4トピックが議論されている.それぞれのトピックについて協議がなされ段階的な ステップを経て統一的なガイドラインへと作成されてきている.

 4) 市販後調査の充実

 以上は市販前における医薬品の有効性・安全性確保のための承認審査について述べたが,次に承認後,販売を開始してからの問題に ついて述べる.GMPも品質の確保を通じて大きな影響を与えているがここでは省略し,再審査,再評価および副作用報告といった市販後調査 について検討したい.

 (1) 再審査

 通常の医療現場における医薬品の使用状況は,治験における非常にコントロールされた条件下での使用とは異なっている.複数の合併症 を持ち,多剤投与を受けている患者,臨床試験では投与の対象から除外されていたような条件の患者にも投与される.個々の患者の置かれ ている状況や医師の診療方針に応じて臨床試験とは異なる使用がなされる場合が生じるが,これはefficacyとeffectivenessの違いの問題でも ある.また,発生頻度が少なく市販前の限られた患者数での臨床試験では発見できない副作用や,既存薬との発生率の違いが検出できない 副作用がある.

 これらの問題に対処するため設けられた制度が新薬の再審査であり,1967年(昭和42年)10月に新薬に対する副作用報告義務期間(3年間 )としてスタートし,1979年(昭和54年)の薬事法改正で法制化された.通常再審査期間は6年で,この間に有効性・安全性に関するデータを収集し 期間終了後に厚生省が評価する.

 (2) 医薬品再評価

 医薬品の再評価とは,すでに承認を受けている医薬品について,最新の医学,薬学の学問的水準や医療環境の変化などを勘案して,現時点 における当該医薬品の有効性・安全性・有用性を見直すもので,1971年(昭和46年)に開始されている.再評価の結果,有用性が認められない 医薬品は製造(輸入)の中止や回収などの措置がとられ,また,効能の一部しか有用性が認められないものは,承認内容の一部を削除する. 再評価の対象は承認時期の古いものから第1次,第2次と順次拡大し,第2次再評価まではすでに作業が終了し,結果が公表されている.

 現在では,新再評価と品質再評価が実施されている.新再評価とは承認時期に関わらず,現時点で有効性・安全性などを再確認する必要 のあるものを対象としたものである.品質再評価は内服固形剤の品質規格に溶出性試験を設けることにより主に後発医薬品の品質向上を 目指すもので,溶出試験規格の設定されていない1995年(平成7年)4月以前に承認申請された医薬品を対象に平成10年度から16年度までに 550成分を超える内服薬について評価するものである.溶出性試験が設定され再評価の終了した後発医薬品は品質情報集−日本版オレンジ ブック―に収載され,先発品と同等なものとして,使用の促進が期待されている.

 (3) 副作用報告制度

 再審査,再評価制度のほかにも副作用報告制度があり,未知で重篤な副作用の発見や発生率の変化を追及している.副作用報告制度は 1967年の副作用モニター制度により開始されたもので,当初は限られた数のモニター病院からの報告であったが,1997年以降はすべての 医療機関と薬局が対象となり,現在では製薬企業からの報告を含め年間25,000件以上の報告が厚生省医薬局安全対策課に報告されている. これらの情報は精査され「医薬品等安全性情報」として定期的に医療機関などに情報提供され,とくに重要で緊急性を要するものについては 「緊急安全性情報(通称ドクターレター)として情報提供され,医薬品の適正使用を支えている.

 5) 医薬品開発の支援

 以上のような市販前の承認審査と承認取得後の市販後調査の方向はいずれも医薬品の有効性・安全性をより高めていく,言い換えると 開発のハードルを高くするという方向の施策である.一方で,エイズや難病に関する医薬品など患者数が少なく採算が取れないため,製薬企業が 開発を躊躇する分野がある.また,医療現場では古くから使用されているがその効能についての承認を受けていない医薬品も存在している. 製薬企業にしてみればその効能の承認がなくても使用され保険請求上も支払いを拒否されないのであれば,敢えて開発経費をかけて承認を 取らなくても困らないという事情がある.前者のようなケースについて開発の支援をしているのが,オーファン・ドラッグ制度であり,後者については EBMベースの承認審査がある.

 オーファン・ドラッグ制度は1993年(平成5年)10月から薬事法の規定に基づき実施されており,患者数が5万人以下,重篤で代替薬がないなどの 条件を満たす医薬品の開発に適用され,開発研究費に対する一部税額控除や申請後における優先審査などの優遇措置を講じている.また, EBMベースの承認審査に関しては,2000年9月にアスピリンが「狭心症等における血栓・塞栓形成の抑制」の効能で,内外の文献データをもとに 承認されている.しかしながら,EBMベースで既存医薬品を評価する際には,市販後のしっかりした臨床データが国内にほとんどないことや外国 にあるとしても外国とは用法・用量が異なる場合が多い,などの問題点がある.


 2. 新薬開発の転換点


 現在,わが国はアメリカに次ぐ医薬品の生産国だが,現在のような医薬品大国となった要因について考えてみたい.新薬開発の転換点に ついては大きく3点があげられる.第1は1961年(昭和36年)4月に導入された国民健康保険などの制度による国民皆保険制度の構築で,これに より,医療用医薬品の生産量が大きく伸びることになる.例えば,1960年(昭和35年)の医薬品生産動態統計を見ると一般用医薬品:医療用 医薬品の比率は46:54だが10年後の1970年(昭和45年)には25:75に拡大している.

 第2に,特許法の改正により1976年(昭和51年)1月に物質特許が導入されたことも大きな要因で,それ以前は製法特許のため同一物質で あっても製法が違えば製造できたが,物質特許の導入により新薬開発が保護されその開発が促進された.

 第3に,1978年(昭和53年)2月に薬価収載方式がそれ以前の後発品が有利な統一限定列記方式から,新薬が有利な銘柄別収載方式に 変わったことがあげられる.これにより,先発品が高い薬価を維持できるようになり一層新薬の開発が促進されることになった.

 以上が,わが国における医療用医薬品,とくに新薬の供給が大きく伸びて来た要因と考えられる.しかしながら,このことが逆にバブル崩壊後 の厳しい財政状況の中で医療保険財政の観点から見直しが迫られることにつながってくる.今後の新薬開発は医療保険制度の行方と国際的 承認審査基準の行方,医薬品開発のグローバル化に大きく影響されるであろう.


 3. 医療保険の観点


 では,薬価制度をはじめとする医療保険制度の中で,医薬品はどのように医療の場に供給されているだろうか.

 1) 現行薬価制度の要点

 薬価とは保険医療機関が使用できる医薬品リストであり,使用した医薬品について保険医療機関が保険請求する際の価格を定めたもので, 厚生省告示のかたちで公表される.また,承認された医療用の医薬品は予防薬を除き原則すべて薬価収載される.

 以下に,現行の薬価制度の要点をまとめる.

 第一に,現行の制度は個別銘柄ごとに薬価を定める銘柄別収載方式である.例えば,Aという成分のカルシウムブロッカーの降圧薬 10mg錠剤が5銘柄あるとすると銘柄ごとに薬価を調査し個別の薬価を決めることになる.

 次に,薬価の算定は,すでに市販され薬価収載されている医薬品の場合と新規に収載する場合とに分かれる.既収載医薬品の場合は, 市場調査−これを薬価調査という−を行いここで得られる加重平均値をもとに一定の価格巾−現行薬価×一定%(R巾)−を上乗せし,次回の 新薬価とする.例えば現行薬価が100円で調査価格が90円で一定%が5%とすると新薬価は95円となる.

 次に新薬の薬価算定方式については,類似薬効比較方式が原則となっている.これは,新たに医薬品が承認されるとその医薬品の主成分, 薬理作用,剤型,内容量と最も類似する既収載医薬品の価格をベースに計算する方法である.算定価格を基に新規性の高いものにはメリット 加算を与えたり,逆にすでに類似の先発品が多い場合は減額したり−これはいわゆるゾロ新算定と呼ばれるものだが−,新規性に応じてメリ ハリを付け新規性のある医薬品開発にインセンティブを与えている.その他外国の価格と大きく乖離する場合は調整したりして決定する.一方, 類似比較できる医薬品がない場合は原価計算方式で算定する.これらのルールは,中央社会保険医療協議会(中医協)で決定され公表されている. 後発品の新規収載についても中医協の定めたルールに従って算定する.

 以上が現行薬価制度の基本的枠組みであるが,バブル崩壊以降の厳しい経済情勢,財政状況のもと,一方で今後確実に進む超高齢化社会や 少子化を考え合わせると,医療保険制度を根本的に見直し再構築する必要がある.こうした流れの中で,1995年(平成7年)頃から薬価制度に ついても抑制の方向が顕著となり,現行薬価制度自体を大きく見直す動きとなっている.

 2) 現行薬価制度の見直し

 現在,薬価制度の抜本的見直しが2002年(平成14年)を目標にすすめられているが,現行薬価制度の問題点として指摘されているのは以下の ような事項である.

 国民・保険組合などの支払い者の立場からは,まず,薬価差の問題があげられている.薬価差は医療機関が実際に購入した価格と保険請求 する「薬価」との間で生じ,これらは医療機関の収入となる.さらに,薬価差の多寡により,製薬企業の卸売業者への販売価格,卸売業者の 医療機関への納入価格が影響される.

 次に,薬剤費総額の拡大である.薬剤費総額は単価と使用量の掛け算であるので,薬価との関係で言えば高価格ということになるが,この 2点については近年の薬剤費抑制策からかなり改善されているといえる.医療費に占める薬剤費の比率が30%を超える時期があったが, 最近では22.23%まで下がっている.

 一方,製薬企業の立場から提起されている現行薬価基準の問題もある.一度薬価収載されると薬価改定の度に薬価が下がるという「薬価 アリ地獄論」と,優れた新薬の価格評価が低いという問題が大きなものである.前者については一定幅の設定の問題,後者についてはメリット 加算を適用する基準の問題であって,制度の本質的問題ではないという言い方もできるが,この2つが製薬企業側の主な主張である.以上の ような指摘事項を解消するべく中医協では平成11年12月17日に改革の基本方針が打ち出され,薬価基準制度の見直しが行われている.

 3) 薬剤費抑制策

 医療保険制度の下では,医療機関が診療に使用した医薬品を100%保険償還するという出来高払いが原則だが,薬剤費を抑制するため,出 来高払いの例外的措置が講じられている.定額払いの拡大や多剤投与の抑制などがこれにあたる.定額払いは,包括化またはいわゆるマルメ とも言われるように,処置料,手術料,薬剤費などの費用を包括して定額に定めるもので,医療機関は定額に収まるように医薬品費などを抑える ため薬剤使用の抑制が期待できる.

 1988年(昭和63年)の老人保健施設入所者基本施設療養費が最初で,主に慢性型で医療内容が一定している老人医療を中心に設定されている. 老人,精神科以外の領域では,1994年(平成6年)外来透析,1996年(平成8年)小児科外来診療科―これは2000年(平成12年)入院にも拡大している ―,1998年(平成10年)には,「高血圧症」の患者の運動療法指導管理料が設定され,さらに2000年(平成12年)には「高脂血症」および「糖尿病」 に拡大されている.2000年(平成12年)には出来高払いか,包括かの選択が廃止され,包括化に一本化された.

 多剤投与抑制に関しては,同種の薬剤を多数投与するようなケースについて,多剤投与により副作用の発生率が高まることを防止するという 医薬品の適正使用の観点から減額査定するものである.1992年(平成4年)に10種以上の内服薬を投与する場合に薬剤費を10%カットすることから 始まり,現在では7種以上の薬剤に拡大され,処方料なども減額されている.

 以上が比較的明確に薬剤の使用を抑制することを目的とした保険上の措置であるが,薬剤費を含めた自己負担率の増加なども間接的に 薬剤の使用を抑制することになる.

 4) 薬剤使用に影響する今後の施策

 現在,2002年の医療保険制度の抜本改正に向けて,中医協で作業が進められているが,薬剤の使用に影響を与えると考えられる事項を あげておく.まず,新薬価制度がどうなるか,とくに新薬の評価,後発品の使用促進などがポイントになるであろう.また,医薬分業における 一般名処方や代替調剤が普及するかどうかも大きな問題で,その他,包括化の拡大,さらにはDRG(Diagnosis Related Groups)の導入, 個人負担の増加といった問題が保険医療における医薬品の使用−マクロ的にも,新薬,後発医薬品の区分別にみた使用にも−の動向に 影響を与えると考えられる.


 おわりに


 医薬品の承認・市販後調査に係る薬務行政の立場からは,品質,安全性および有効性が一定水準以上の医薬品であれば認めるということで あり,薬事法に定められた承認の拒否要件に照らしても他の要因で承認しないということはできない.

 しかしながら,この水準は決して固定的なものではなく医薬品行政の国際化と相まって医学・薬学の進歩,医療環境の変化などに伴って引き 上げられてきており,当然今後も続くと考えられる.したがって,高い水準で有効性・安全性が確認された医薬品が承認され,相対的に安全性 または有効性が低く医療上の有用性が減じた医薬品は再評価制度や副作用報告や市販後調査により順次淘汰されることにより,市場には常に 一定水準を満たす医薬品が流通するという状態になる.

 2002年実施を目標にした医療保険制度の抜本改正作業のなかで新たな薬価制度や薬剤給付問題が議論されているが,この動向は今後の 医薬品の使用,医薬品開発の動向に大きな影響を与えるだろう.薬価制度については新薬,後発医薬品などの医薬品の役割分担を考慮した 評価のあり方が,定額払いやDRGについては給付の水準が,薬剤給付の問題については患者負担のあり方が鍵になると考えられる.

 薬価制度をはじめとする医療保険制度は国の財政状況と密接に結びついており,医学・薬学的議論だけでは詰めきれない要素が多く存在する. もちろん医療経済学の立場から個々の施策の根拠を与える試みはなされているが,まだまだ未成熟である.しかしながら,今後の医療保険改革 の議論が財政論に終始することなく,医療水準の確保の観点から合理的根拠のある選択がなされることを期待する.

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Vol.28, No.3, Jun. 2001「ヘルシンキ宣言2000年改訂とグローバリゼーション時代の倫理」目次へ