「新一般用医薬品」開発と評価のためのガイダンス
Guidance for the development and assessment of
“New Nonprescription Drugs”

    研究班員:主任研究者:清水 直容
           研究協力者:石川 達郎 石橋 康正 板倉ゆか子 北 史男 木下 眞男
           小嶋 茂雄 小安 和夫 竹内 輝博 野中 博 真下 浩
           望月 真弓 盛田 捷幸 (五十音順)

〔臨床評価(Clinical Evaluation ) 2000; 27(Suppl XIV): 21-8より〕


Abstract
  Nonprescription drugs have played a significant role in the improvement of the health and life of people. Recently, some prescription drugs have been switched to nonprescription status, as sufficient clinical experiences have been accumulated and the ingredients are confirmed to be effective and safe by reexamination, or nonprescription drugs have been newly formulated with combination of ingredients not clinically used so far. These so-called“new nonprescription drugs”(switch over-the-counter drugs:SOTCs, or direct over-the-counter drugs:DOTCs) (See the end of this text) have been felt, particularly after switching of H2 blockers to OTC status, to need reviewing in respect to the methods of development and assessment as well as the postmarketing surveillance.
  In answer to this need, the Central Pharmaceutical Affairs Council held sessions on attitude toward the approval and examination of“new nonprescription drugs”, and published basic thinking summarized under 5 headings. Based on this thinking, the present research team studied the trial protocol and the method of postmarketing surveillance for collection of data needed to develop and evaluate“new nonprescription drugs”. The results of this research are presented in the following.
  Although there is room for further investigations in the method of the development of nonprescription drugs, the team expects the present results to serve as references in the future development of new nonprescription drugs.


*本報告書は平成10,11年度厚生科学研究により行われたもので今後の「新一般用医薬品」の開発と評価のための考え方を調査研究したものである.なお,これに続く英文のガイダンスは研究班の公式の翻訳ではなく,あくまでも議論のための私文書として扱って戴きたい.



はじめに


 国民の健康と生活の向上のうえで,一般用医薬品の果たしてきた役割は少なくない.近年,医療用医薬品としての使用経験が十分に蓄積され,かつ再審査などによって有効性と安全性評価が行われた成分が一般用医薬品へ転用される場合,あるいは使用経験のない新規成分が配合される場合の,いわゆる「新一般用医薬品」(スイッチOTC:SOTC,あるいはダイレクトOTC:DOTC)(末尾参照)の開発と評価方法,さらに市販後調査について,H2ブロッカーのOTC化を契機に,そのあり方があらためて見直されている.

 これを受けて,平成10年12月に中央薬事審議会において,「新一般用医薬品」が今後申請された場合の承認審査の考え方について検討され,その結果,5項目からなる基本条件が公表された.その考え方を基本にして,本研究では今後の「新一般用医薬品」の開発と評価のために必要なデータを収集するための試験方法および市販後調査の方法について検討したので,その結果を以下に示す.

 新一般用医薬品の開発の方法などについて,なお今後検討を要するところが残されているが,本検討結果が今後の新一般用医薬品の開発の参考となることを期待するものである.


 第1章 新一般用医薬品の臨床試験


 新一般用医薬品の臨床的評価は,これまで,新一般用医薬品の有効性および安全性を検証するための臨床試験(通常の治験),あるいは医療用医薬品としての開発,市販後調査などによって得られた知見に基づいて行われてきたが,本研究班では,一般用医薬品として実際に使用される場合を想定した臨床試験(評価方法)について検討した.

 検討は,SOTCを中心に行ったが,DOTCについても,用いた開発手法(試験方法)によっては,市販後の使用実態を想定した評価を市販前に行うことが適当であろう.

 新一般用医薬品については,市販前に,想定される市販後の使用実態に近い状態において試験検討を行うことは有益と考えられる.また,諸外国では,この種類の試験の実施前に開発対象となる新一般用医薬品の表示の理解度調査が行われている場合があり,わが国でも必要に応じて,理解度調査を行うことも考えられよう.

 なお,症例数が限られるなどの理由により,市販前に行う治験では見いだせない事項があり得ることから,市販後調査によって一般用医薬品としての適切性を再確認することも必要である.


 総 論


 1. 基本的な考え方

 使用実態治験:AUT(Actual Use Trial:AUT)(注:用語などについては今後の検討が必要)

 使用実態治験は,開発を行う「新一般用医薬品」について,使用対象者の母集団を代表し得る被験者において実際の使用条件に近い条件下での有効性と安全性を評価するために行う試験である.その主旨に鑑み薬局における薬剤師を中心とした試験であるが,試験のいずれかの時点で医師,歯科医師の協力があることが前提と考えられる.当該薬剤の使用対象集団における薬剤の有効性を評価するにあたって,この「AUT」は最も重要な検証試験であり科学的,倫理的で信頼性のある試験を原則とする.

 候補となる医薬品は,平成10年12月に中央薬事審議会一般用医薬品特別部会で合意された基本方針に合致することが前提条件となる.また,治験に至る考え方や実施の妥当性などについては,医薬品機構の治験相談などを活用して予め十分検討することが必要である.

 2. 適用範囲

 「新一般用医薬品」としての承認を得るために申請予定のすべての医薬品は,「AUT」の実施を考慮されるべきである.用語の定義は,GCPに準じる.

 1) SOTCの場合

 用法・用量の設定が医療用の成績によりすでに評価され決定されているか,外国でのOTC薬としての実績がある時は用量・反応試験を行わず,医療用医薬品の「治験」の第V相試験に準じる検証試験を行うことが基本となる.試験デザインを工夫することにより,検証試験として「AUT」を実施することは可能である.(注:「AUT」はこれまでの臨床試験に追加して行われるべき性質のものであるが,試験方法・試験デザインを工夫することにより,試験の重複は避けることが望ましい.)

 用法・用量または他剤の配合など,医療用医薬品としての使用実態からの変更がある場合,例えば,
  a) 医療用に比べ用量を下げるなど用法・用量が異なるもの,および
  b) 医療用に比べ用量を下げ,配合剤としたもの,
については,「AUT」の実施に先立って,これまでの臨床試験,専門家によって行われた良質な臨床成績,医療用としての市販後の経験に基づく報告などを参考にして,予め用法・用量設定のための試験の実施が必要であり,使用対象となる人々の中で適切な警告と表示に従って使用される場合に副作用が発生する率が低く,広く使用されるようになった場合に濫用される可能性が低いことなどの実態の解明が求められる.また,2種類もしくはそれ以上の有効成分が配合される場合には,いずれの有効成分も効果をもたらすこと,併用することによりそれぞれの成分の安全性と有効性を減少させないことについての証明も求められる.

 しかしながら,試験内容は候補対象となる医薬品により異なり得ることに十分留意する必要がある.必要な試験を検討する際には過去に蓄積したあらゆる既存のデータを最大限有効に活用すべきである.

 例えば,用法・用量の変更のない単味剤または配合内服剤あるいは外用剤でその適応が適切に読み替え可能な場合で,かつ使用期間を短くし小型包装とするなど安全性面での対策が確保された場合は「AUT」により有効性・安全性を示し得る.

 2) DOTCの場合

 「AUT」に相当する試験成績が求められるべきであるが,新医療用医薬品の治験に相当する臨床試験と「AUT」とを区別して行うか,あるいは「AUT」で求める情報を入手できるような試験デザインを工夫した臨床試験を行うのか,個々の医薬品について検討が必要である.

 3. 留意事項

 「治験」と呼ばれる臨床試験は,GCPに従って行われるべきである.すなわち,1)「治験」被験者よりの同意が前提である.2)「AUT」においては,被験者の記入する記録なども治験の原資料として扱われ,また,3)治験依頼者は,「治験」に協力した薬局,医療機関へのモニタリングを行うことも必要である.


 各論(AUTのデザイン)


 1. 目的

 当然のことであるが,まず,臨床試験の目的が明確になっていることが必須である.

 2. 実施施設(薬局や診療所など)と責任者

 「AUT」は医師の協力を前提条件として実施するが,「AUT」の目的から,中心的な実施機関としては,薬局が想定される.

 例えば,被験者の選択(被験者の適格性判定)は医療機関において行うことが適切な場合が想定されるが,その場合でもそれ以降の試験は,できるだけ薬局で行うことが適当と考えられる.

 予め医師の協力を確保することは,試験実施の前提条件であり,緊急時に被験者に対して必要な措置を講ずることができるよう医療機関とタイアップし協力体制を予め確保することが必要である.

 「AUT」を実施する薬局にはその試験の責任者となる薬剤師が必要である.薬局の条件として一般用医薬品と処方薬調剤に実績があり被験者の薬歴管理が可能な信頼性が高くインフォームド・コンセントを取れる十分な環境設定のできる薬局を選定する.今後,必要であれば試験の責任者となる薬剤師の要件も別に定める.

 試験の内容や医薬品の性質により有効性・安全性評価に医学専門家を必要とする場合には医師(病院,診療所)が中心になるが,対象が一般用医薬品であることから,「AUT」として実施する試験については,医師による診察・説明ではなく,薬剤師による説明が中心となるよう試験デザインを工夫することが必要である.

 3. 治験審査委員会の設置とその機能

 治験審査委員会は,被験者の立場に立って治験内容の倫理的・科学的妥当性を審査する.

 「AUT」については,地域の医師会,歯科医師会,薬剤師会に参加・協力を依頼し,その他専門家以外の学識経験者を加えて,治験審査委員会を組織する.

 4. 被験者の同意取得方法

 GCPに従い,被験者から直接に同意を取得することを原則とする.被験者,または適切と認められる代理人には文書による説明を行った上,本人(止むを得ない時は,代理人)の自発的な同意を得て文書を残す.

 説明書に記載すべき事項については医療用医薬品の治験の同意の取得に準じる.

 5. 試験方法

 試験デザインは,検証試験においてはランダム割り付け比較試験,かつ二重盲検を原則とし,成績を科学的に実証し得るものとすべきである.(注:このデザインによる試験を行わない場合は,その理由を明確化する)

 一般用医薬品の適応は自覚症状,あるいは軽医療の対症療法であるので対照薬は原則としてインアクティブ・プラセボとする.

 例外的に標準薬を対照として行う時は,明確な理由がなければならないが,その場合には,新統計ガイドラインによる非劣性を証明する試験とする.目標症例数設定の根拠の提示なども必要である.検査が必要な場合の検査項目などについてはプロトコールに予め明示する.

 6. 使用期間

 一般用医薬品は対症療法を目的としているため,症状が消失した後も使用を継続することは問題があり,試験期間は使用上の注意などに記載する使用期間とすることを基本とする.

 実際の使用期間は,評価項目の一つとして情報収集する.

 なお,必要に応じ,使用終了後の追跡調査を行う.

 7. 被験者の選定

 被験薬の想定される効能・効果である症状を予め決め,適応症状を有することを確認した上でエントリーする.

 「AUT」では原則として,申請予定適応症状を中核の症状として有する被験者にて試験を実施する.

 選定は治験審査委員会の承認を得た条件を満たし,同意の取得を前提にする.「AUT」の場合には選定に際し,予め医療機関で当該医薬品使用の適格者であるかの選定を愁訴,既往歴,身体所見,簡単な臨床検査あるいは誘発試験などによって確認した上で行うことも一つの方法として考えられる.また,対象薬剤によっては,購入場所である薬局において,製品情報に基づいて適応者であることを薬剤師が判断することも一つの方法として考えられる.

 8. 有効性・安全性の評価

 一般用医薬品の有効性は被験者自身の判定により症状の消失,症状の重症度の改善を主要変数にして評価するが,再現性,客観性のある段階的評点スケールなどを使用する.

 効果判定や服薬状況確認のためには被験者の記入する記録(原則は毎日記入)を活用する.被験者の記入する記録の中に,被験者が理解しやすい判定基準を記載する.被験者が自覚症状を自ら評価する際には,必要に応じ薬剤師が評価基準の説明などの支援を行う.

 被験者が,当該医薬品の使用に際し,効能・効果,用法・用量,使用上の注意(とくに警告などの重要な事項)の遵守状況を評価するが,有効率の評価では用法・用量に従った場合の有効率が主要変数となる.被験薬を使用しなくなるまでの期間(症状の消失・改善による服薬終了および無効・悪化による中止)も評価項目に入れる.

 被験者が有害事象として記載した事象を安全性評価とする.その事象の重大性により薬剤師あるいは医師は事象と医薬品との因果関係を明らかにするようにし,結果を依頼者に報告する.

 服薬遵守は,未使用治験薬を回収し,症例報告書や被験者の記入する記録に記載された服薬状況により確認する.「AUT」では必要な場合のみ薬剤が服用されることが多いので,服用状況の確認が必要である.治験薬の交付・保管および回収は治験に関わる薬剤師が行う.

 効能・効果,用法・用量,使用上の注意(とくに警告などの重要な事項)の不遵守(ノンコンプライアンス)については,年齢層別なども加味した解析を行う.

 これらの評価により,当該一般用医薬品が対象としている集団向けの情報提供の妥当性(表示や添付文書の読みやすさ,分かりやすさ,解釈しやすさおよび製品が意図する用途など),表示外の用法(推奨されていない服用量あるいは服用期間,表示以外の適応症については,妥当でない集団における使用など)や過量摂取の可能性(とくに小児および未成年),および濫用の可能性(濫用に該当する可能性のあるとく性を製品が有するとく定の場合)などの情報を十分に明らかにする.さらに,申請された効能・効果,用法・用量,使用上の注意などが,当該一般用医薬品が対象としている集団での安全性,食事・嗜好品と報告がある相互作用,他剤との相互作用,表示された用法や警告の遵守状況,薬物摂取パターン,自己流の治療パターンの評価もできるようにする.また,必要に応じ使用後一定期間の安全性,有効性も評価する.


 第2章 新一般用医薬品の理解度調査


 使用者が適正な情報に基づいて自らの判断で使用するということが一般用医薬品の大きな特性である.このため,新一般用医薬品の表示などから必要な情報(効能・効果,用法・用量,使用上の注意中の禁忌事項,相談事項など)について,使用者が正しく理解することができなくては新一般用医薬品の適正使用はありえない.

 欧米では,市販前に,実際の薬剤使用は行わないで,想定される市販後の表示事項が容易に正しく理解されるか,一般の人々を対象とした試験(調査)が行われている場合もある.

 新一般用医薬品の表示についての理解度を市販前に調査し,その結果を反映させて臨床試験を実施し,さらに適正な表示の製品を市販するという考え方自体は妥当なものであると考えられ,かぜ薬,胃腸薬,外皮用薬などの事例をもとに検討を行ったが,その結果,表示を見ながら回答すれば当然高い正答率が予測され,また,表示を見ないで回答を求めることは実際の使用状況を反映したものとは言えず,通常のアンケート方式での試験(調査)により表示内容の理解度を調査しても,とくに意義ある情報を入手することは期待しがたいものと考えられた.

 一方,「一般用医薬品添付文書の改善に関する研究班」において,使用者が理解しやすい表示について検討が重ねられた結果,「一般用医薬品の添付文書などの記載要領」が見直され,すでに通知(平成11年8月12日付医薬発第983号,984号)されている.これは従来の添付文書に比べ理解しやすいよう配慮されたものとなっており,多くの場合この記載要領に則った表示により臨床試験を行うことが可能と考えられる.

 以上のことから,すべての新一般用医薬品に対して,このような試験(調査)を市販前に一律に課す必然性は乏しいものと考えられた.

 しかしながら,一般用医薬品としては今までにない作用機序または効能・効果を有する新一般用医薬品あるいは用法・用量が特殊なものなどについては,このような試験(調査)を実施することが必要な場合も想定され,また,わかりやすい表示が望ましいことは改めて言うまでもなく,このような試験(調査)を実施すべき新一般用医薬品の対象範囲,試験(調査)方法などについては今後の検討が必要と考えられる.


 第3章 新一般用医薬品の市販後調査(PMS)


 新一般用医薬品については,市販後の有害事象の発生状況と適正使用の実態について,適切な調査により情報の収集および検討を行い,その結果に基づき,必要に応じ,医薬品による保健衛生上の危害の発生もしくは拡大防止,または医薬品の適正な使用の確保のための措置を適切に講じていく.

 DOTCについては,承認に際して再審査期間が設定され,SOTCについては,承認後一定期間(原則として3年間),副作用などに関する市販後調査を市販後調査計画書に従い実施することが求められる.予想外の有害事象の出現や不適正な使用などが行われていないか確認するためには,市販後早期に集中した調査を効率的に実施するべきである.

 なお,市販後調査を計画する際には,使用実態治験(AUT)成績を含め,市販前に得られている情報を確認し,当該医薬品に関して,どのような情報を市販後に収集するべきか十分な事前検討が必要である.とくに,市販前に入手している情報から,市販後に情報を補完すべき事項などがあることが判明している場合には,それらの情報を確実に入手し得るよう,市販後調査を計画することが肝要である.

 また,市販後調査により,市販前に想定していなかったような事実が判明した場合には,迅速に適切な措置を講ずべきことは当然であり,収集した情報の評価検討も迅速に行われる必要があり,調査検討の結果によっては市販後調査の項目などの追加設定なども適宜実施されるべきである.


 総 論


1. 医師・薬剤師などからの有害事象報告を中心とする安全性に関する製造(輸入)企業による情報収集・評価検討は,当該製品が市販されている間は継続して行う必要がある.

2. 承認時に指定された市販後の一定期間は,有害事象や市販前に入手していた情報(使用実態治験(AUT)の結果など)を補完する情報を収集すべく,集中した調査を効率的に実施するべきである.

3. 薬局などの参加・協力により使用者が当該医薬品を適正に使用できたか,その実態を定量的に調査することも必要である.なお,その際,同時に有効性,安全性の調査も行えば,事前に実施された使用実態治験(AUT)の結果を補完することができよう.

4. なお,使用実態の調査で留意すべきものとしては,以下の如き事項が考えられる.
  ・調査を依頼する薬局の選定に当たっては,適切な薬歴管理を実施している信頼性の高い薬局を選ぶなど,調査の精度を高めるよう留意する.
  ・また,必要であれば調査に参加する薬剤師の要件も別に検討すべきであろう.

5. 調査結果を客観的に評価し,表示事項の不都合が判明した場合などにおいては,添付文書の改訂など速やかな措置を講じる必要がある.


 各 論


 1. 市販後早期に集中して行う有害事象の調査

 1) 調査項目を記載した調査用紙を薬局などにて販売時,製品に原則全数添付する体制を整備し,有害事象発生の有無にかかわらず,適正使用に関する情報,および,一般用医薬品としての妥当性を含め,広く使用後の報告が収集されやすい環境をつくることが必要である.
    なお,「有害事象有り」の場合は,当然のことながら,副作用調査票にて更に追跡調査を行うべきである.

 2) 調査を実施するに当たり,当該製品を新規に取扱う薬局などに対しては,一律に調査への参加を要請することも一案である.

 3) 調査用紙・調査項目は内用,外用,薬効群別に形式を統一することが望ましい.

 4) 調査の信頼性確保に関しては,社内評価委員会への外部委員の参画や第3者機関による評価の実施など,客観性の確保方策を検討することが望ましい.

 2. 使用実態の調査

 1) 禁忌事項を始めとする使用上の注意事項,用法・用量などの表示に従って,当該製品を適正に使用できたか,使用の実態を使用者アンケートにより調査する.この時,有効性・安全性に関する項目もアンケートに加えることができる.

 2) 新一般用医薬品の使用実態に関する調査期間中に,使用の実態の把握が可能な症例数を収集することが必要である.なお,調査の信頼性を確保するため,アンケート調査の回収率などについては一定の水準以上の確保が望ましい.

注) 新一般用医薬品の申請区分としては(1)〜(3)があるが,申請区分(3)に該当するものは原則としてこれに含まれない.

 ・申請区分(1):新有効成分含有医薬品(DOTC)

 ・申請区分(2):新有効成分以外の有効成分であって,既承認の一般用医薬品の有効成分として含有されていない成分を含有する医薬品(SOTC)

 ・申請区分(3):既承認の一般用医薬品の有効成分として含有されている成分からなる医薬品であって,当該薬効群に属する既承認の一般用医薬品の有効成分として含有されていない成分を含有する医薬品および当該薬効群の既承認の一般用医薬品と有効成分の組合せ,効能効果又は用法用量が異なる医薬品(ただし,(4),(5)のいずれかの区分に属する医薬品又は承認基準に適合する医薬品を除く.なお,申請区分(4),(5)の記載は省略)

(参 考)

(a) 医療用医薬品に限って使用されていた有効成分が初めて含まれる一般用医薬品(いわるスイッチOTC)が申請された場合の承認審査の考え方

 @当該有効成分(いわゆるスイッチ成分)を含有する医療用医薬品について,再審査または再評価が終了していることを条件とする.

 Aスイッチ成分の副作用の発生状況,申請された用法および用量,海外での一般用医薬品としての使用状況,再審査または再評価の結果などを踏まえ,一般用医薬品として適切であるかどうかを中央薬事審議会の意見を聞いて審査する.

 B適正使用と安全性確保の方策として,市販後調査の実施に加え,必要に応じ情報提供の方法,販売方法,広告宣伝に関し,承認条件を付す.

 C市販後調査の実施を求めることなどから,承認にあたっては,薬事法第29条に基づく厚生大臣の指定薬とする.

 D市販後一定期間(原則として3年間),副作用などに関する市販後調査(PMS)を市販後調査計画書に従い実施することを求める.なお,市販後1年の時点で一旦調査結果をまとめ,とくに必要な品目については中央薬事審議会の意見を聞いて承認事項,承認条件などの見直しを行う.

(b) 新有効成分を含有する一般用医薬品(いわゆるダイレクトOTC)が申請された場合の承認審査の考え方

 @申請された用法および用量,海外での一般用医薬品としての使用状況,副作用の発生状況などを踏まえ,一般用医薬品として適切であるかどうかを中央薬事審議会の意見を聞いて審査する.

 A再審査期間の設定に加え,適正使用と安全性確保の方策として,必要に応じ情報提供の方法,販売方法,広告宣伝に関し,承認条件を付す.

 B再審査の実施を求めることなどから,承認にあたっては,薬事法第29条に基づく厚生大臣の指定薬とする.

 C市販後1年の時点で一旦調査結果をまとめ,とくに必要な品目については中央薬事審議会の意見を聞いて承認事項,承認条件などの見直しを行う.

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VOL.27, Suppl XIV Aug.2000「新一般用医薬品の世界的動向」目次へ