臨床評価 1997; 25(1): 115より
規制緩和、国際化、情報公開のいわゆる3Kの大波にもまれ、われわれと関係ある医薬品効果(市販前後を問わず、 適正使用のための広い対象)についても、環境は大きく変化しているが、いよいよ厚生行政、審査体制、治験体制、市販後調査体制 などなどの基本舞台ができあがり、後は役者の登場を待って如何なる演技が繰り広げられるかを期待する芸術の秋となった。 芸術とは不謹慎といわれるかもしれないが、医薬品の使用は科学であると同時に、アート、芸術であると信じている。
コントローラー委員会も発足して25年になり、いくつかの記念事業が計画されているが、その1つにインターネット ホームページ (http://www.sphere.ad.jp/cont/)の開設がある。本号をもって第25巻となる「臨床評価」掲載のこれまでの全論文のタイトル、 執筆者名および薬剤名の紹介と委員会の活動などが中心であるが、適宜われわれのメッセージも発信される。
本号には総説1、解説1、原著4が掲載されている.総説の中島論文(続編)は、緑内障の病態にも多くの血中循環ペプチドが関係することを述べており、自称内分泌学者の編集後記執筆者としては忸怩たる思いであるが、同時に薬物の持つ広範な作用の恐ろしさも感じた次第である.解説論文はICH4でStep4の合意(平成9年7月)が得られたM3(臨床試験を実施する際に必要と考えられる非臨床試験)という重要なガイドラインの最新の解説で、フェイス1に入る時に必読の論文である.とくにガイドライン文章の背後にある考え方が述べられていることが重要である。
市販前、後を問わず一貫した安全性評価の必要性が認識され、その体制の確立が要望されている現在、林論文は有害事象の発見と評価に、市販前臨床試験の重要性を強調した点でとくに価値がある.佐藤論文はこの林論文の具体的検討事例である.
佐藤・光石論文は新GCPにとって重要な項目の1つである説明と患者の同意について、アメリカのがんセンターで実際に用いられている方法、CIOMS−WHOガイドライン、およびこれらを基にアメリカで実際に用いられている「乳がん手術後の薬による再発予防の臨床試験」説明文書の詳しい資料である.背後にある理念はもちろん、具体的な解説は今後日本の説明と同意に関する議論の際必読文献となるであろう.
われわれのこれまでの先駆的主張が、実行に移されてきたとはいえ、なお多くの問題を抱える医薬品評価について、今後何をなしうるか、25年という節目を迎えて考えることの多い昨今であるが、志を一にする方々のご支援をお願いする.(N.S.)