編集後記


臨床評価 1993; 21(3): 521より

医薬品の有効性、安全性および有用性の評価に関しては、ICH3に向かって国内をはじめ国際的にも多くの面での動きと進展 がみられている。

近く、Summary basis of approval(SBA)の第1号が公表される予定であるが、これは抗腫瘍薬イリノテカンに関するもので、 今後の臨床治験実施や評価にあたって留意すべきいろいろな問題を考えるうえで多くの示唆を与えたものと考えられる。

医学論文はその投稿にあたり目的と意義を明確にするとともに、記述もできるだけ要点を絞って、必要とされる最小限の図表を まとめるべきであるという意見を研究者の間でよく耳にする。しかし、臨床報告とくに医薬品の臨床評価に関する論文では、 必ずしもこの考え方をあてはめることは妥当ではない場合も多いと思う。

本号でもfamotidineの胃・十二指腸潰瘍の臨床的有用性に関する2編、ならびにpassiflaminの神経症に対する臨床評価に関する 多施設二重盲検比較試験など計3編が掲載された。このような臨床試験の報告は、仮説の設定、試験計画、対照群の選択、 エンドポイントとの明確化、その他将来におけるhistrical control studyとしての引用も可能な充実したものとするためにも、 現在のようなスタイルを踏襲し、さらにその内容の適正化と充実をはかっていくべきであると考える。第U相、第V相のものに比べて 発表の少ない第T相試験の報告として、近年注目されている選択的セロトニン再取り込み阻害作用を有する抗うつ剤の一つである fluvoxamineが採用されたことは、今後さらに第T相試験の報告が多くなるものと期待したい。

また、このたび医薬品ではないが、心臓ペースメーカーなどの医療機器についても、医薬品同様に安全対策がとられることになり、 厚生省は1961年以来始めて、関連する薬事法の改正を行うことにしたと報道された。この医療機器に関する法の部分改正は4月 中にも国会に提出されるかも知れないということである。

たまたま、アメリカFDAは、現在医療機器、用具の臨床試験のためのガイダンスを作製中で、目下(案)の段階である。このガイダンス 作製に先立ってFDAの医薬品評価研究センターの専門家が、長官の依頼を受けすでに医療用具などの承認を得るために提出された 申請書を検討し、今後の審査にあたる医療用具・放射線の健康に関するセンター職員に対して、提出された臨床データの持つ 多くの欠陥を指摘し試験の立案、実施や評価にアドバイスを与えるべく臨床審査委員会最終報告書を作製し、委員長のTemple 博士のご好意で、本誌に転載を許可された。表題は医療用具に関する意見具申であるが、その内容は医薬品に関する臨床試験 のあり方に対するFDAの厳正な考え方が随所に示されている。ぜひとも参考にしていただきたい資料である。(Y. O.)

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