編集後記


臨床評価 1992; 20(1): 221より

本号には、この3月厚生省から発表された「臨床試験の統計解析に関するガイドライン」が掲載されている。

このガイドラインにはいくつかの特徴が見られる。まず第一に、従来の「統計的有意差無しをもって同等」とみなす考え方を はっきり否定し、同等性のより積極的な証明を求めている。統計的検定は本来、有意差を証明するための方法であり、 「有意差無し」を目的とするなら簡略化したラフな試験を行うほどよいことになるから、今回の方向付けはきわめて自然な 成り行きと考えられる。

次に、統計解析以前の「データの質」について詳しく言及している。とくに第V相試験においては、適切な対照群を置いた 無作為化二重盲検比較試験を原則とすること、不完全例の取り扱いによっては試験結果に重大な偏りを生じ、データの 信憑性にまで影響が及び得ることを述べている。実際、不注意による不適格例の多いことが治験の質を疑わせることは かねてより指摘されていることである。データの信頼性は、その後のいかなる統計解析によっても回復し得ないので、 慎重な対処が望まれる。

さらに、U相前期までの探索的試験、同後期の用量設定試験、およびV相の検証的試験の性格付けを行っているのも 特徴である。探索ではデータの底ざらえもある程度許されるが、検証では種々の多重性を避け、厳密な統計解析を 行わねばならない。このことは、探索解析における失敗は解析者自身がそのリスクを負うのに対し、検証解析失敗の リスクを負うのは一般の人々であることを考えれば理解できる。かつて生産性のみを追求した日本的品質管理が公害・ 環境破壊のしっぺ返しを経験した後、今は人類の福祉(生産者のではなく)を標傍しているのに学んで、社会に受け容れられる 治験を行ってほしい。なお、V相試験の成否はU相試験までの情報の蓄積に大きく依存していることに留意する必要がある。

さて、今号の総説は内藤周幸先生によるT相試験の諸問題である。従来、T相試験に関する立ち入った議論は意外に少 いように思えるが、各相の役割を明確に謳ったガイドラインに沿ったタイムリーな話題であり、参考になる。原著もV相の 二重盲検群間比較試験、至適用量設定のために二重盲検群間比較試験、そして新薬のための第T相試験とバラエティ に富んだ内容となっている。(C. H.)

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