編集後記


臨床評価 1991; 19(4): 573より

1992. 2. 25付けの日経(朝刊, p. 27)によると、いまから20年後の2010年には、世界人口は72憶(現在53憶)、GNPは実質1.4倍、 名目4倍(91兆ドル、1990年は23兆ドル)となる。日本のGDP(名目)は2010年には16兆ドル(1990年2.9兆ドル)、世界経済の18 %(1990年13%)、一人あたりGDPは12万2千ドル(実質5万ドル、1990年2万4千ドル)、アメリカの1.8倍となる。日本の人口 増加率は0に近くなる。

現在日本人女性が一生に産む子供の数は1.3人を割り、イタリヤやスペインと並ぶ小産国になった。これは、若い男女が結婚 しなくなったことが影響している。しかし、スェーデン、フランスなど、人口減少になやんでいた国も最近では2人をこえたそうだから、 日本も将来再び子供が増加する可能性はある。

一方、世界中の女性が、一生に2人ずつ子供を産み続けると、2050年には世界人口が百億を突破し、不可逆的に環境破壊が 進んで人が住めなくなる危険があると言う(Nature: 356, 759, 1992)。

日本では2010年までは、労働力は、生産性向上、女性や高齢者の活用、外人労働者(およそ2百万)の受け入れで充足できる。 2025年には日本では4人に1人が65歳以上になり、スイス、スェーデン、ドイツなどとならぶ老人国になる。元気で働く老人が 日本をささえる時代がすぐそこにきている。

臨床治験では、老人を対象から除外するのが常である。老人に対する薬の投与は、子供にたいするのと同様、成人と異なる 配慮が必要である。この号の上田慶二の総説「適切な高齢者の薬物療法のために」は、この点を詳しく解説した力作である。 高齢者の治験は第V、W相でルーチンに行うべきではなかろうか。それにしても、年度にまたがる臨床治験が、事務手続きの ために長い間中断するという噂を耳にする。患者への食事を年度末に中断する病院があるだろうか。臨床治験の重要性を もっと一般にわかってもらう必要がある。この号には、ほかに、cibenzolineの心房細動、粗動への効果、低分子量ヘパリン製 剤の人工透析への応用の報告が載っている。

コントローラー委員会および本誌は20年を迎え、1992年7月に横浜で第5回国際臨床薬理学会のサテライトシンポジウムの前、 24日に記念講演会を予定している。多数の御参加をお待ちしている。(中島 章)

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