臨床評価 1987; 15(2): 413より
コントローラー委員会で採用して来た解析システムが一部改められることになった。
すでに数年前から、統計関係の国際学会、シンポジウム、および本誌の総説等において周知のように、検定の回数が増える ことによる言い過ぎの問題は、、はじめはいわゆる多重検定の問題としてうけとられたが、医学界に限らず多くの研究、調査論文 における複数の有意差検定の意味の問題として、いくつかの類型に分けられ、それぞれについて議論が進められて来た。この 一連の議論の発展を通じて多くの興味ある問題が派生している。
一方、2剤比較のさいに標準薬に比べて有意差が出なかったことをもって、標準薬に劣るものではないとか、同等であるという 傾向に対する論理的対策も急がれている。
さらに患者背景要因(demographic factor)に有意差があり、この要因が治療予後に相関しているものであるとき、どう処理する のがもっとも妥当であるかという議論がある。元来、男女など少数の項目以外のほとんどすべての背景要因は、治療予後 に関係があるとみられるからこそ採用されている。また、20〜30もある背景要因のうち検定である要因に有意差があったとき、 これの意味は複雑である。しかし有意差の有無にかかわらず、結果に影響する要因差は妥当に処理できないものかと考えられて 来た。
これらの問題としてその解決ないしは処理の進歩に対しては、統計学の理論の発展のみでなく、臨床側の実験にさいしての仮設 の構造の整理も迫られている。
当委員会の解析システムは、号をあらためて記述する予定であるが、当面妥当と思われる統計処理を行えるように改めることにした。 これらによる結果や、方法の選択をめぐっての議論がさらに発展することを期待する。
なお委員会としては、これらの議論が臨床の実態から遊離して独り歩きしないよう、また個々の臨床家がこれらの方法を適切に 使えるよう努めることを原則としているので、当委員会または編集部あて文書にて御意見を寄せられることを期待している。(佐藤 倚男)